葬儀費用はなぜ一定ではないのか—父を見送ってわかった「仕組み」と現実—

昨年末に父を見送りました。
いろいろ思うことはありますが、ようやく少し気持ちが落ち着き、こうして文章にすることができるようになりました。

今回は、ファイナンシャルプランナーとしての視点も交えながら、葬儀にかかるお金について、実際に経験して感じたことを書いてみようと思います。
少しセンシティブな話題ではありますので、このような内容を避けたい方は、ここで閉じてくださるようお願いします。

葬儀費用の現実

私が実際に関わって感じたのは、
葬儀は思っている以上にお金がかかるものだということです。

様々な広告やインターネットなどでは「十数万円でできる葬儀」といった情報を目にすることがありますが、それはあくまで最低限の形を指していることが多いように感じました。

一連の行事を経験して実感したのは、葬儀の費用は感覚的なものではなく、きちんとした「構造」があって成り立っているということです。

まず、人が動きます。
遺族と相談して段取りを整え、当日の進行を滞りなく進めるためには、多くの人の手が必要です。
そこには当然、人件費がかかります。

次に、資材が必要です。
祭壇や供花、会場の使用、移動のための車両など、目に見える形での資材も必要になります。

こうした一つひとつが積み重なって、葬儀の費用は構成されています。

さらに、実際に依頼して感じたのは、葬儀社が持っている「ノウハウ」の価値でした。
私は実家の地元で、昔からある葬儀社にお願いしました。最初に「私たちはこういったことの経験がなく、わからないことばかりですが、よろしくお願いします。」と伝えたところ、

「わからなくて当然です。身内に不幸があるのは30年に一度くらいのことですから。それをフォローするのが私たちの役目です。どうぞ頼ってください」

と言っていただき、とてもホッとしました。

葬儀は、多くの人にとって人生で何度も経験するものではありません。
だからこそ、それを支える側の経験や知識に対してお金がかかることもあるのだと思いました。

「安い葬儀」と実際のギャップ

一方で、「安い葬儀」という言葉もよく耳にしますが、
安い葬儀社があるというより、安いプランに対応する葬儀社があるように感じました。

実際、私がお世話になった葬儀社にも、費用を抑えたプランは用意されていました。それはいわゆる直葬と呼ばれる、火葬のみを行う形式です。

こうした選択肢自体を否定するつもりはまったくありません。
ただ、実際に送り出す立場になると、きちんと見送りたいという気持ちが自然と出てくる場面も少なくないと思います。

たとえば、祭壇に花を添えたい。
移動は簡素な車ではなく、きちんとした形で送り出したい。
そうした一つひとつの積み重ねによって、結果的に費用が加算されていくのだと感じました。

また、インターネット上では「安いと思って依頼したのに、最終的には大きな金額になってしまった」という声も多く見かけます。
実際、菩提寺の住職からも「葬儀社は事前に決めておいたほうがいい。慌てて決めてトラブルになるケースがとても多い」と言われていました。

特に、都市部から進出してきた葬儀社をインターネットだけで選んでしまい、後から思っていた内容と違ったという話が少なくないそうです。

もちろんすべてがそうだというわけではありませんが、そうしたケースがあるということは、知っておいてもいいのかもしれません。

私が選んだ形

私の場合、父の葬儀は親族を中心に静かに行うものでした。

父は平均寿命よりも長く生きてくれたこともあり、現役時代の関係者や親族の多くはすでに他界しており、大勢の弔問客が訪れるような状況ではありませんでした。

いわゆる家族葬という形とする選択肢もあったかもしれません。
でも私は、「きちんと送り出したい」と思いました。

父はいわゆる大企業で管理職を務めていた、プライドの高い人でした。
もし、もう少し早い時期に亡くなっていたら、多くの方が弔問に訪れていたと思います(そうならずに良かったと心から思いますが)。

そう考えたとき、「今はもう、この世にいないから来ないけど、来ていたかもしれない人たち」に対しても恥ずかしくない形にしたい、という気持ちがあったのです。

会館で葬儀を行い、祭壇も立派に整えました。
喪主として挨拶をする場面では、この世ならざる100人の参列者、父が仕事でお世話になった方や、口うるさい親族たちに向かって、完璧な喪主の挨拶をしました。

結果として、それなりの費用がかかりました。
ですが、私はその選択をして良かったと思っています。

事前に考えておくことの大切さ

私はファイナンシャルプランナーの資格を持っているので、普段、個人的にお金に関する相談を受けることがありますが、その中でいつも感じるのは、「何にどれだけお金をかけるかに正解はない」ということです。
安ければいいというものでもなければ、高ければいいというものでもありません。

その人が納得できる形で使われたお金であれば、それがその人にとっての正解なのだと思います。

葬儀も同じで、「どこまでを大切にしたいか」によって、選ぶ形も、かかる費用も変わってきます。

ただ、葬儀に関しては、いざその時になってから判断するのはとても難しいと思われました。

身近な人が息を引き取る直前は、
病院や施設に通い詰め、治療やケアの方針など、多くの辛い決断を迫られます。

さらに息を引き取った後は、悲しみに暮れる間もなく、
気持ちにも体力にも全く余裕がない中で、葬儀社との間で、短い時間で多くの判断を求められます。

だからこそ、事前に、少しでも方針を考えておくことが大切ではないかと思います。

そうは言っても、すぐに何かを決めることは難しいと思います。
私も葬儀社の事前相談には行きましたが、前もって決められることはほとんどなく、その時になって決めたことがほとんどでした。

ただ、頭の片隅に置いておくだけでも、いざという時の助けになるのではないかと思います。

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